当社の亜鉛鉄合金メッキ、亜鉛ニッケル合金メッキ、無電解ニッケルメッキなどの表面処理技術は、独自の加工技術と充実した設備による高度な品質が認められ、自動車産業はもとより、家電、建築、IT 産業で広く採用されております。鉄亜鉛合金メッキでは、国内生産の車のクラクションの約60%のメッキを行っており、クリーン度が要求される電算室や半導体向けのクリーンルームで用いられているアルミダイカスト製床板のニッケルクロムメッキではオンリーワンの実績を持っており、群馬県内の製造業の優れた独自技術を選定した「1社1技術」に選ばれております。
11 ラインの自動メッキ装置を保有して、あらゆる素材のメッキに対応しています。特に、メッキが困難とされていたアルミニウム品に超音波を利用した前処理ラインで表面の汚れを完全に除去し、その後置換被膜を生成させて密着の良い無電解ニッケルメッキを付けてから、電気ニッケル、クロムメッキと連続的に完全自動ラインでメッキを行っています。
環境に配慮した完全自動化ラインが当社の自慢で、無電解ニッケルメッキでは200 ターン以上のメッキ液の再生実績で廃液の大幅な削減に取り組んでいます。
一般的な鉛蓄電池には、鉛粉を混練した活物質を鉛合金製の格子に充電したペースト型の電極が用いられていますが、当社は、薄いアルミ板の上に鉛をメッキすることで、鉛蓄電池電極の軽量化に成功しました。
過去にも多くの企業が伝導性の良い軽量なアルミ素材に鉛メッキを付けて鉛蓄電池用の電極格子の試作開発に取り組んできましたが、鉛メッキで発生するピンホールを防止できずに未だに実用化の目途が立っていません。鉛メッキの最大の課題であるピンホールを防止するメッキ技術は当社だけのオリジナル技術です。
相談者は、県の補助金を活用して開発した鉛蓄電池の電極について特許で保護したいとのことで、窓口を訪問されました。
お話を伺ったところ、数日後に補助金の成果報告会を控えており、そこで開発した鉛蓄電池の電極について100 名ほどの前で発表を行う予定とのことでした。相談者は発表後であっても特に問題なく権利化できるとの認識でしたが、発明を公開する前に特許出願を済ませておくことの重要性について理解していただき、至急、発表するデータやスライドの内容について取りこぼしのないよう社内において明細書を作成して特許出願していただくことになりました。
発表及び特許出願が終わり、一段落したところで、先行技術調査について支援を行ったところ、障害となる米国文献が見つかりました。特許権の取得に向けて、先に相談者が特許出願した明細書等をどのように補完していけばいいのか、専門家(弁理士)を活用しながら十分検討を行った上で、優先権主張を伴うPCT 出願を行いました。
また、特許出願した技術以外にも、製造ライン、メッキ治具、廃液処理等の様々なノウハウがありますので、INPIT 知財戦略アドバイザーと連携し、先使用権の確保、営業秘密管理の整備を進めております。
ノウハウが多いメッキ技術は特許で守ることが難しい分野ではありますが、支援を通じて、特許で守る技術と秘密にして守る技術を選別していく知財マインドが育ったと思います。
また、PCT 出願を通して海外の知財制度について把握し、新技術のリリースとともに業界で話題となり、複数の新聞にも取り上げられました。
その後も、新しいアイデアを思いつくたびに、窓口を活用していただいております。
取引先から「こんなメッキは出来ないか?」との問い合わせに、これまで何度も開発技術を他社に取られた経緯がありますが、「仕事が継続して続くならいいだろう」と半ばあきらめていました。知財総合支援窓口を利用して、「開発した技術は守らなければならない!」と意識を強く持つようになった次第です。これからも知財総合支援窓口を活用させて頂き、プロの目線で色々とアドバイスを受けることで、他社では真似できないユニークな技術の開発にチャレンジして行く所存です。
飛び込みの特許出願支援がスタートでしたが、過去の苦い経験から情報流出に危機意識をお持ちでしたので、スムーズに営業秘密管理規定の導入にも取り組んでいただくことができました。もともと高い技術力をお持ちの会社です。本来持っている力を発揮して成長していただくため、特許と営業秘密の両面から、今後も継続的に支援させていただきたいと思います。 (浅川 陽子)
鉛蓄電池用電極の特許及び営業秘密の支援(372.0 KB)
掲載年月日:2020年1月10日