当社は、軽井沢町に農地があり、平成22年度(2010年)よりいちご栽培に取り組んでいます。いちごや加工品の販売と共に、いちご狩りも行っており、国内外から、老若男女の多くの観光客にご来場いただいています。
加工品は、数種類のジャムやシロップ、ドライいちごを保存料や着色料を使わずに加工・生産しています。
いちご狩りは、12月下旬から6月下旬の冬いちご、7月上旬から12月中旬の夏秋いちごを、種類を変えて栽培しており、通年で楽しむことができます。
軽井沢町の当社農場所在地は、浅間山や妙義荒船山に囲まれた標高約1000mに位置する高原地帯であり、自然豊かな水・土・空気に恵まれた軽井沢の中でも優良な農業地帯です。冷涼な気候と自然豊かな環境で育まれる爽やかな甘さのいちごを、浅間山を望む絶好のロケーションのもと、ハウス内で天候を気にせずに楽しむことができます。
このような環境で、完熟まで育て糖度が高く、果肉も十分熟した状態で収穫し、加工します。また、保存料や着色料を使用していませんので、素材の味と香りが生き、自然に近い製品を提供します。
軽井沢高原で育った新鮮ないちごの色や香り、甘みをまるっと凝縮した、軽井沢の“旬” が詰まった従来なかったドライいちご『旬かる』です。
当社独自の特許製法により、いちごを丸ごと、何も加えずに、真空状態の低温で乾燥させ、色や香り、甘みを損なわれにくくしています。生いちごではできなかった長期保存後であっても、採れたていちご同様に甘みや香りを味わうことができます。さらに軽量であるため、土産品として注目されています。
長野県内の地域資源を活用した新事業展開・新商品開発等を行う助成事業の担当機関である公益財団法人長野県中小企業振興センターから紹介を受け、当窓口に特許出願の相談に来訪されました。
特許について権利化希望ではあるものの、先行技術との差異が不明確であるため、先行技術調査を行うことを勧めました。その後、専門家(弁理士)への相談によって技術内容の要点を確認しました。その後、特許出願を行い、早期審査を利用して3か月で登録になりました(特許第6317871号)。
さらに、商品の付加価値向上とブランド作りを推進する事業を行っている長野県地域資源製品開発支援センターの紹介により、商品名の商標登録出願の検討も行いました。事業のメンバーであるデザイナーを含めて検討した複数の名称案の中から、使用可能性・登録可能性の調査とアドバイス実施後、専門家(弁理士)の支援を得て商標登録出願を行いました(商標登録第6153911号)。
新商品発表の記者会見の際には、特許内容を正しく説明できるように助言を行いました。その結果、新聞記事に特徴が正確に記載され、周知されました。周知により、いちご狩りの来場者数も増え、お土産として「旬かる」を購入される方もいらっしゃるそうです。
特許や商標、ブランドに対する認識が高まり、チラシやホームページにその旨を記載しています。知財も含めた広告活動の結果、売上げが増え、逆に冷凍在庫が減少して管理が容易になりました。さらに、自己が開発した技術を一層有効に活用するために、現在は使用していない商品や、アレンジした商標での権利化を行い、将来を見越した幅広い視点を持てるようになりました。
当初は、知的財産権の意味・内容等がわからず、また費用対効果にも懐疑的でしたが、支援を受けて登録になり、広告や商品・企業説明に使用するようになると、その必要性を認識するようになりました。事業を行う場合、事業を継続するためにはもちろんのこと、事業体(企業)の発展のためにも有効な旨、機会を見て地元の業者等に周知したいと考えています。
農業は、従来通りに農業生産物を作るだけではなく、改良・開発された農業生産物や、新たな加工品を生産し、付加価値をつけるように徐々に変わっています。これらの工夫を活かして権利化することは、相互の開発進歩を促し、業界の発展に寄与するものと思料します。 (久保 順一)
軽井沢産加工いちごの特許・商標の取得と活用支援(421.5 KB)
掲載年月日:2020年2月14日