当社は、佐賀県多久市の八幡岳から流れ出る清流と静かな1万坪の敷地で、5万匹の「すっぽん」を産卵・稚亀から育て、定番商品である家庭用スッポン鍋セットを中心に、全国の旅館・料亭・料理店に自然飼育の柔らかい肉質のスッポンをお手頃な価格で販売しています。健康ブームへの志向から大手サプリメーカーへの出荷が大部分を占めている事業運営に危機感を持ち、自社ブランドによる新たなスッポン加工商品の開発に着手。新商品としてレトルト鍋の素、缶詰用レトルト・珍味缶詰、スッポン調味料等の開発を進めています。大和養殖が育てるスッポンは、『滋養・強壮』の代名詞になるほど、必須アミノ酸を全て含みミネラル分・コラーゲンが豊富なことから、美容食・健康サプリ商品として、男性・女性・お年寄りまで年齢を問わずに、日本中で食されています。
当社は、活きスッポン以外に産卵した卵の生産管理に努め、珍味商品としての焼酎漬けや、大学等の研究用原料としてスッポン卵を供給しており、品質の高い安全なスッポンを卵から肉まで一貫した生産システムで供給できるところが自社の強みです。更に今回、新商品の開発及び販売に向けて、最新の急速冷凍機・レトルト製 造装置の導入を進め、既存のスッポン生産者にはない自社ブランド商品となる、「高級スッポン料理が手軽に、安く、早く、何時でも食べられる」スッポン新商品の提供を始め、新たなニーズに応じたOEM新商品開発が自由に出来るところも自社の強みです。
これまで、スッポン料理は高級なイメージから高額でなかなか手が出させない食の一つでした。その食材を新しい食べ方(手軽で安く、美味しく、早く、いつでも)をモットーに開発した新触感のスッポン鍋の素・もつ煮が自社の一押し商品です。夜のイメージが強いスッポンに着目して「夜の缶詰」シリーズの商標登録(商標登録第6158176号)を行いました。さらに、コラーゲンの強みを活かして、新たなシリーズの商標登録出願も考案中です。既に商品化への目途が立っているスッポン肉のもつ煮の缶詰、珍味缶詰を始め、スッポンの全ての栄養成分を濃縮した酵素分解による万能スッポン調味料(色々な料理の隠し味に最適)など、展示会等で商品バイヤーからも好評な新商品を家族で楽しんでいただければと思います。
当窓口では、県内の商工会・会議所との連携を進めており、経営指導員から支援事業者にスッポン加工品のブランド化を進めている同社を紹介していただき、周知活動の一環で訪問を行いました。以前、商標を登録していたが、更新費用が高額であることと手続きの方法が解らなかったために数年前に権利が消滅した経緯があり、もう一度ブランドとして商標登録が可能か否かについて同社社長から相談を受けました。
消滅している商標が既に、他者に登録されているか否かの商標調査を行い、未登録であれば登録できる可能性がある旨を説明させていただいた上で、J-PlatPatによる先行商標調査の方法を指導しました。ご自身で先行商標調査を進めていただいたところ、類似性の名称はあるものの、同様の名称で登録されていることが確認できなかったという結果を受け、商標登録出願に向けて専門家(弁理士)からの助言を受けるように提案をさせていただきました。
同社社長から、食するスッポン料理の市場は大きく減少し、健康サプリ市場にシェアが傾いている現状を伺いました。また、「大手サプリメーカーとの価格交渉はメーカーによって左右され、健康志向を軸としたサプリビジネスへの将来性にも不安があることから、スッポンの新たな食としての商品開発を模索しており、ブランド商品としての仕組み・仕掛けについてアドバイスをしてほしい」との相談を受けました。そこで、商標及びブランド支援に精通した専門家による自社の強みを活かした事業化支援の事業骨格を計画し提案をさせていただきました。
スッポン養殖事業の物珍しさから、メディアからも注文され、主力商品である加工冷凍スッポン肉を中心に、大手通販サイトやふるさと納税の返礼品としての小口の消費者ビジネスを主力事業としていましたが、商標登録出願を行ったことをきっかけに、新商品のブランド事業化に着手しました。今回初となるバイヤー商社向けの展示会出展に参加したことで、スッポンを活かした新たな新商品ブランド事業への可能性を掴み、経営資源を充実させるために、急速冷凍機を始め、レトルト装置や缶詰装置の導入を進め、生産・加工・販売を一元化する大口事業体制に変化しつつあります。
知財総合支援窓口の方に訪問していただき、色々な相談を通じて、コミュニケーションが図られたことで、サプリメーカーとのビジネスに傾いていた事業を、新たなスッポンの食につながるビジネスについて気づきを与えていただきました。今回のプロジェクトは事業の承継につながる仕掛け・仕組みづくりと思っております。儲けにつながるビジネスモデルの一つとして、今後益々、事業の拡大につなげて行きたいと思います。
実際にお会いして支援していく中で、一生懸命に事業に取り組まれる姿勢、さらに次の事業への思いを聞くにつれて、知財を武器とした儲けにつながるビジネスの提案が必要と判断して、専門家を活用しながら事業のシナリオを築いてきました。今後は、今回の儲けるシナリオにさらにプラスしたアイデア事業に期待します。 (末次 孝之)
商標を活かした(すっぽん)加工商品のブランド化支援(407.4 KB)
掲載年月日:2020年2月20日