糸島市は、魏志倭人伝に記載されている伊都国であり大陸との玄関口として栄えた地です。現在では大都市福岡市に接し、その利便性の高さと住環境の良さから移住先として人気を集めています。新鮮な魚介類が直販される「志摩の四季」や日本一の売上高を誇る野菜直売所「伊都菜彩」などがあり、野菜、魚介類のおいしさが魅力の一つです。糸島漁協は平成13年、17年の二度の合併を経て、組合員合計402名で構成されています。
糸島では玄海の荒波で育った豊富な海の幸が水揚げされます。例えば漁獲量日本一を誇る天然真鯛や、高鮮度処理をしたサワラ、その他にカキ、いりこ、はまぐり、うに、そしてこれらを加工した真鯛めし、小鯛のオリーブオイル漬けなどを消費者の皆様にお届けしています。
週末になると福岡市をはじめ遠くからもたくさんの人が来訪され、「糸島のカキ小屋」は冬の風物詩として人気を集めています。提供される「糸島カキ」は、JF糸島カキ養殖漁業部会で定めた厳しい検査基準に合格したカキです。そこでこの度地域団体商標「糸島カキ」を登録しました。(商標第6142031号)この登録を契機に一層、品質管理を厳格にし、ブランド力の向上を図っているところです。
糸島漁協ではこれまでに商標5815361「JF糸島」、商標5825196「本鰆」の2件の商標登録を自らの手で行いました。これらの商標を使用して糸島漁協のブランド化を目指していましたが、人気を博している「糸島カキ」については地域団体商標の登録をしたいと考えました。
しかし地域団体商標は一般の商標と異なる点があることから、出願相談に来訪されました。
地域団体商標「糸島カキ」は2017年11月に出願しましたが、2018年9月に商標の拒絶理由通知がきました。過去の出願では指定商品の記載を補正するなど、比較的軽微な補正で登録査定を得ることができました。しかし地域団体商標の拒絶理由通知では、出願人による商標の使用実績、周知度などを示す具体的な資料が求められます。この対応相談のために再び当窓口に来訪されました。
当窓口では、まず拒絶理由通知を熟読することをアドバイスしました。そして要求されている事項に対応できる資料の準備を勧めました。具体的には新聞やテレビなどでの「糸島カキ」の紹介、旅行誌への掲載、百貨店の催事への出展、宅配便の発送伝票などの資料です。これらは出願人糸島漁協による商標「糸島カキ」の使用実績および周知性を立証するものです。
地域団体商標の拒絶理由通知対応のために多くの資料が集められました。すると出願人糸島漁協の表示がなかったり、商標「糸島カキ」の表記が「糸島牡蠣」であったりとバラバラな表記であることがわかりました。「糸島カキ」のブランド化を目指すには、組合員全員が統一した名称を使用し、高品質の「糸島カキ」を提供して、消費者に覚えてもらうことが「糸島カキ」のブランド化だと再確認されました。組合員がこの意識と誇りを持つようになったことは大きな成果です。
糸島漁協では「カキ小屋での糸島産カキの直接販売」、「サワラの高鮮度処理による魚価の向上」、などの活動を行ってきました。その結果平成30年度「浜の活力再生プラン」優良事例の最優秀賞である農林水産大臣賞を受賞することができました。また岐志漁港ではカキ小屋の全面建て替えが実現でき、マスコミでも多数紹介されました。その結果、2019年~2020年のカキシーズンの売り上げは、前年比約170%を見込んでおり、組合員も活気づいています。
当窓口では、糸島漁協さんの地域団体商標の出願から登録までの支援を行いましたが、最も大きい要因は糸島漁協さん自体の積極的な行動によるものです。現在は近隣の漁協さんでも地域団体商標の取得、ブランド化への活動が動き始めています。今後は糸島漁協さんの協力も得て、他の漁協さんの支援も積極的に進めたいと思っています。 (金谷 利憲)
地域団体商標「糸島カキ」で浜の活力再生(552.1 KB)
掲載年月日:2020年3月 5日