当社は、1949年(昭和24年)に旧富士製鉄㈱(現在の日本製鉄)と旧日鉄鉱業釜石鉱業所(現在の釜石鉱山㈱)の協力会社として創業し今日に至っています。三陸沿岸釜石市という立地上のハンディはありますが『豊かなノウハウでナレッジを活かし、距離は技術でカバーします』をキャッチフレーズに掲げ、モーター、ポンプ等のメンテナンスを主力としつつ、受託溶射加工、モーター用コイル製作、電気工事業などを行っています。
2018年には「はばたく中小企業・小規模事業者300社」(中小企業庁)にも選定されています。
当社は、モーター・ポンプのシャフトやスリーブ等の高温強度の向上、機械摩耗の低減、化学腐食に対する長寿命化を図り、省コスト化につながる溶射被膜技術を有しています。また、岩手県工業技術センターをはじめとする公設試や大学との連携・交流に積極的に取組みそれらの成果を技術レベルの向上や新製品開発に活かしています。光触媒技術を搭載した空気抗菌清浄装置の開発は当社の強みとする溶射被膜技術を応用するとともに連携・交流の取組みが装置の機能効果にかかるエビデンスの取得のための協力を得ることにつながっています。
光触媒式空気抗菌装置「カザノイア」(商標登録第6002619号)シリーズです。カザノイアとは「風の家」という意味です。宮澤賢治が好んだエスペラント語風に名付けました。汚れた空気を吸い込み、フィルター・光触媒ユニットを通して、きれいな空気を吐出します。菌や臭気は紫外線照射した酸化チタンプレート(=光触媒ユニット)の表面で不活性化・分解され、空気を循環させて室内、施設内の空気環境をキレイにします。当商品に応用されている当社独自の光触媒技術(特許登録第3944551号)は、岩手県工業技術センターとの共同研究により酸化チタンプレート上の酸化チタン露出部分の最大化に成功したことで高い性能・効果を発揮させています。
当窓口では独自に、中小企業等が保有する知財を活用した新商品の開発や販路開拓などを支援する知財コンサルティング事業を実施しています。今回の支援は、光触媒関連技術の共同発明者である岩手県工業技術センターの職員からの紹介を得てこの事業の利用を勧め、受諾いただいたことから始まりました。
事前ヒアリングの段階では、老人福祉施設や学校、畜舎、酒造メーカーの麹室などを市場として想定されていましたが、マーケティング基本戦略(=STP)は明確になっていない状況でした。そのためSWOT分析、ビジネスモデル・キャンパスを基本ツールとして専門家(中小企業診断士)、同社社長及び専務、窓口担当者で数次にわたるディスカッションを行った結果、有力な競合企業がある分野は回避し、まずは酒造メーカー等の協力により実施した実証試験で同社商品の雑菌・微生物の大幅な減少効果が確認された麹室用としてマーケティング活動に注力することとなりました。
同社の空気抗菌装置にかかる登録商標は、「サンアールエコクリーン」(商標登録第5198024号)と「カザノイア」がありますが、ブランディングの観点からの助言を行い、すべて「カザノイア」に統一することになりました。また、これまで自社商品の無かった同社は、販売又はリースに係る契約に疎かったことから知財関連条項も含んで販売契約書や製品保証書、取扱説明書の作成についても専門家(弁護士)による支援を行いました。
当面の注力顧客とした酒造メーカーへのPR活動も積極的に展開され、すでに受注先も確保、今後さらなる拡大も見込める状況となりました。また、重要な営業ツールとなるホームページについても単なる企業紹介や商品カタログとならないようにとの助言を参考にされて商品コンセプトや装置の優れた性能効果を示すエビデンスデータを掲載するなどの改定がなされました。
岩手県知財総合支援窓口には、アクションプランの作成や各種契約など「カザノイア」の事業展開にあたり多岐にわたってご支援をいただいています。空気抗菌装置では、当社はまだまだ知名度の低い存在ですが、今後ともご支援をいただきながら販路の拡大・強化につなげたいと考えております。
同社の素晴らしいところは、助言等にかかるアクションプランの速やかな作成と実行というレスポンスの良さと思っています。当面は麹室用の販売に注力されますが、今後は酒造メーカーの酒蔵用や食品製造業への販路拡大が十分期待できると思っています。 (酒井 俊已)
特許技術活用による光触媒式空気抗菌装置の販路開拓支援(368.0 KB)
掲載年月日:2020年3月 3日