『和×夢 nagomu farm』は、和歌山県田辺市三栖(みす)地区を拠点に、寛永元年(1848年)より約170年間続いている農家です。
2012年より、『和×夢 nagomu farm』と命名し活動しています。
田辺市は、世界農業遺産に「みなべ・田辺の梅システム(2015年認定)」が認定されており、中でも三栖地区は市内でも有数の梅の産地です。
南高梅を主軸とした梅と柑橘を栽培する果樹複合経営をしており、現園主の那須 誠氏で【八代目】になります。
経営理念は、『和の国【和歌山県・日本】より、農業を通じて「夢」を伝え、「和む場」を創設する』で、『和×夢』部分でも表現しています。
梅『ミスなでしこ』の優良品種開発や高品質生産の【農分野】と、生産全量の直接取引による付加価値販売【営業分野】を両立し、追求しています。
『ミスなでしこ = made in 和×夢 nagomu farm』のブランド定着を図るため、【コンセプト/パッケージデザイン/プロモーション等】全ての戦略に対し、自社独自でブランディングに努めています。
ホームページやSNSを活用した自社情報発信と、個人注文販売等を通じて、消費者とのコミュニティの創設にも努めています。
また、行政や民間企業などと他業種連携や協力を図り、『ミスなでしこ』を国内外に広く認知いただく施策を実践しています。
2005年、七代目が育成誕生させた、果皮が美しい紫色に着色する梅を、『ミスなでしこ』の名称で商標登録(商標登録第5314209号)し、2010年より商標権を所持しています。
梅酒や梅シロップに利用すると、見た目が鮮やかなピンク色に仕上がるのが特徴で、2019年産より香港への海外取引に試行着手しています。
和歌山県では、幅広い分野で優れた県産品を推奨する『和歌山県優良県産品推奨制度(プレミア和歌山)』が制定されており、2017年度に【農産物】として当園産の『ミスなでしこ』は認定されています。
2年前の和歌山市内のイベントで当窓口が行った周知活動をきっかけに、2018年5月に商標登録出願の相談に来られたのが支援の始まりでした。相談内容は、紫色の梅「ミスなでしこ」の商標権について、指定商品の変更による新たな出願と現在使用しているネーミングおよび同園の屋号の複数の商標登録出願の相談でした。
これらのネーミング等を商標登録出願(2018年9月出願)として申請できるように支援していく中で、同9月に紫色の梅「ミスなでしこ」の商標権の管理および扱う商品の(梅、梅の実)の品質管理について相談を受けました。古き良き時代に地元の農家の方と交わした契約書では、商標の管理等が難しく、紫色の梅の品質管理も思うように高い品質を保てないという悩みでした。
そこで、専門家(弁理士、弁護士)を節目節目に交えて意見交換を行い、2018年度末には、①商標権の管理と梅の品質管理ができるように古い契約書を整理するとともに新たな契約書を取り交わすこと、②個々の農家ではなく、取り纏めている地元の大手農業サービス事業体とライセンス契約を結ぶことを目標としました。具体的には、契約書廃棄の手順、当該事業体と協力した農家の方への説明内容、ライセンス契約書の商標権使用許諾の条件、ライセンス料の設定、商標を付する梅の品質管理基準の設定等の細部に渡り支援し、2019年5月の梅の出荷時期の直前にライセンス契約が交わされました。
その結果、紫色の梅の生産・販売が管理され、2019年7月末に今年度分のライセンス料が当園に支払われました。当園は元々知財意識が高かったのですが、支援を通じて商標権や契約に関する知識やスキルも高まり、農業を経営する上で必要な知的財産権についての理解も深まりました。さらにブランド化を目指して、契約に基づき着実に品質管理レベルを高めることと、INPIT-KANSAIの知財戦略エキスパートも活用し、海外への輸出や商標の海外出願等の本格展開を検討されています。
不透明で曖昧だった『ミスなでしこ』流通体制の明確化&管理把握をする事は、自身だけでは難しい事業でした。相談を通じて、順序立てて親身にアドバイスをいただけた甲斐あって、希望通りの契約締結に至った事をこの上なく感謝しています。
今後も、進めている知財戦略の要所要所で、適宜アドバイスをいただき、目標実現のサポートをお願いしたく考えております。
契約書の廃棄や締結は難しい場合が多いのですが、当園と地域の方との昔からの良好な関係もあり、実現できたことを喜ばしく思います。当園は、地元やその産品に対する愛着が強く、今後も地域興しに精を出され、地域と共に当園の事業が、グローバルに益々ご発展頂くことを心から願っております。 (吉川 昭男)
紫の梅のライセンス契約とブランド化の支援(474.1 KB)
掲載年月日:2020年3月 5日