当社は、1930年(昭和5年)、奈良市内(現:ならまち)において、奈良蚊帳の製造で創業し、今年で90年を迎えます。奈良の特産品「蚊帳生地」を製造し、その蚊帳織り技術を活かしたオリジナル商品を開発、ならまちにアンテナショップとしてオープンした「ねっとわーくぎゃらりー ならっぷ」などで商品展開しています。また、数年前からニューヨークや欧州の展示会に継続的に出展し、海外ブランド「Nawrap」を掲げ、蚊帳生地に機能性を持たせたオリジナル商品で海外市場を開拓しています。
当社は、染色から縫製まで一貫生産できる体制を構築しており、原糸受入・整経・染色・サイジング・製織・糊付加工・縫製を自社工場内で業務管理しています。一貫した製造工程を有しているので、商品の調整や変更、納品時のロット、納期に柔軟に対応できます。また、お客様の企画サイズ、色、素材にも素早く対応できる商品企画力もあり、さらに当社デザイナーによるプリント柄などの提案も可能です。
自社独自の製品を発信したいとの想いから、ラッピング資材の「マルラップ」とオリジナル製品を販売する「ならっぷ」をブランドとして立上げ活動しています。
蚊帳生地の「蚊帳織りふきん」は、縦糸、横糸が荒く織られた平織りの構造が特徴で、通気性・吸水性・速乾性に優れ、肌触りもとても良い商品です。さらに、洗濯すると生地の柔らかさが増すのも大きな魅力です。
国内では、無地の「蚊帳織りふきん」に加え、アーティストとコラボした模様の入ったふきんや、絵便りふきん、備長炭色合わせふきんが人気です。
一方海外では、ナチュラル・機能付き繊維素材(備長炭・柿渋・オーガニック)が人気で、知名度の高い備長炭は人気の商品です。
今後は、オーガニックをキーワードに蚊帳生地商品を開発していきます。
同社は、自社で商標登録出願し、取得した商標権を自社で管理してきましたが、保有する商標権が増えるに従い、更新期限管理等に課題が生じ始めている状況でした。当窓口相談のきっかけは、これらの保有商標権の一部が更新時期を迎え、電子出願端末での更新手続きの支援と、保有する商標権の管理方法に関する相談でした。
商標更新手続きを支援する中で、知財管理体制(管理表作成、更新期限管理等)構築について支援しました。また、保有商標権の再編を検討頂いた結果、国内向け統一ブランド「ならっぷ」(商標登録第6021546号)を出願されました。さらに、海外展開を視野に入れた新たなブランドを検討することとなり、専門家(弁理士)を派遣して、海外出願戦略を検討頂き、基礎登録のため、海外向けブランド「Nawrap」(商標登録第6097721号)の出願について支援しました。
米国市場への本格的進出の意向を受け、INPIT-KANSAI知財戦略エキスパートと専門家(弁理士)を派遣し、米国の商標権制度と出願方法(直接出願、マドプロ出願)について理解を深めて頂くとともに、実施計画(海外展開課題整理、ブランド統一、海外出願など)の策定を支援しました。さらに、外国出願補助金の活用とマドプロ出願について支援し、海外向けブランド「Nawrap」(商標登録第6097721号)が国際登録(登録番号1494255)されました。
同社は、経営ツールの1つとしてブランド戦略を活用し、新たな販路(米国市場)を開拓し、新たな顧客を獲得して、売上拡大という最大の経営成果に結びつけました。現在、商品企画段階での知財検討を定着させ、新たな知財活用に取り組み始めています。同社の強みは、オリジナリティのある商品企画力であり、他社に先駆けて販売する力ですが、国内では、3年程度でコピー商品が出現し、先行販売の効果が薄れてしまうという課題を有しています。この課題に対し、知財で対応するという方針のもと、同社として初めて意匠を出願し、さらに、特許権取得についても検討を進めています。
初めて海外商標出願(マドプロ出願:米国・欧州)に取り組みましたが、外国出願補助金制度の活用方法も良く分からず、なかなか実行出来ずにいて、知財総合支援窓口に相談しました。知識豊富な窓口担当者並びに専門家に親切丁寧にご指導頂いた結果、無事、国際登録することができました。今後も海外展開におけるアドバイスをはじめ、知財活用についてご指導頂きたいと思います。
奈良の伝統産業である「蚊帳製造」が新しい形で甦ろうとしています。海外ブランド「Nawrap」(国際登録番号1494255)を冠した蚊帳生地商品(ふきん,タオル他)で北米市場を開拓し、顕著な経営成果を上げています。海外事業が新たな経営の柱になるよう、今後も支援を続けていきます。 (澤田 敬)
ブランド戦略を活用した海外展開(383.8 KB)
掲載年月日:2020年3月19日