当社は、産業機械、工場設備、医療機器等の切断、曲げ加工、溶接組立、塗装・表面処理などの金属板金加工業を営む会社です。プラスチック成型機の部品を製造していたバブル期当時は順調に業績を伸ばしていましたが、リーマンショックにより売上が激減。経営多角化を図り、医療機器、工作機械や自動車、産業機械関連の部品加工などの受託事業や、医療器具製造の企業連携に取り組んできました。様々な経営改革を行っていく中、下請けから脱却するために長年培った高度な精密板金技術を活かした独自製品の開発に着手。かんざし等の装飾品、インテリア製品を社内で企画し、新たな事業の柱として育てるべく、オリジナルブランドを製造・販売しています。
当社の強みは、単品多品種にも対応できる金属微細切断技術、複雑な曲げ加工技術、高度溶接技術など独自ノウハウに裏打ちされた精密板金加工技術を保有していることです。長年培った精密板金加工技術と、新たに導入した最新のデジタル・レーザー加工機や曲げ加工機によって、高度で緻密・繊細な製品を提供しています。オリジナルブランド「三代目板金屋」の立ち上げにより、メディアに取り上げられ、製品はファッションショーにも採用されました。また国内外の展示会にも出展することで、板金加工の新規顧客開拓に繋がっています。
オリジナルブランド「三代目板金屋」は、女性社員が企画、デザインから運営の全てを担当。当社が保有する精密板金加工技術と女性ならではの視点、感性を活かした和モダンな金属製品を提供しています。特に艶やかな光を放つ「KANZASHI(かんざし)」は、繊細なデザインと機能性を追及。「普段着にひとさしの輝きを。」をコンセプトに、普段から身につけていただける「KANZASHI」を目指して開発しました。高品質な素材を板金職人が丹精こめて磨き上げた逸品です。
同社は、取引先に依存していた下請けからの脱却を目指して、新規事業立ち上げを模索され、女性社員だけでチームを結成し、精密板金加工技術を活かしたテーブルやランプ等のインテリア製品、かんざし等を企画・製造されました。展示会出展にあたり、何か知的財産で保護できないかと、静岡県産業振興財団の担当者とともに当窓口を訪問いただいたことがきっかけです。
知的財産制度の概要、知的財産の重要性を詳しく説明し、商標、意匠権の活用を提案しました。また、製造ノウハウは秘匿化することを助言しました。
その後、オリジナルブランドである「三代目板金屋」の商標登録出願について支援し、商標権(登録第5773462号、登録第6249201号)を取得されました。また、製品開発やブランディングについては、デザインに精通した専門家を派遣し、デザイン開発への取り組み方について助言していただきました。個々のデザインの保護は費用対効果を考え、著作権と意匠権での保護を提案(意匠登録第1595075号)しました。その後、海外での展示会出展を予定されていたため、海外展開を視野に、INPIT海外知的財産プロデューサーによる支援を実施し、海外展開の進め方と留意点、模倣品対策等について理解を深めていただきました。静岡県産業振興財団とも連携し、海外での販売もスタートしています。
当窓口を利用することにより、企業経営における知的財産の重要性を認識されました。他社との差別化を図り、企業としてのブランド価値を高めるために知的財産権を活用していただけるようになりました。
自社独自で開発した商品を国内、海外販売していくにあたり、模倣品に関する様々な不安がありましたが、一つ一つに関して丁寧に相談にのっていただき、不安を解消してきました。商標登録や意匠登録の申請に関しても、アドバイスをいただき、無事に取得できました。今後は、機密事項の管理体制を構築していくために支援をお願いしたいです。
知財活用をきっかけに、より一層事業が発展されることを期待しています。強みである加工技術の保護のために、営業秘密管理体制の構築が今後の課題です。引き続き、専門家や支援機関と連携しながら、経営に即した支援をしていきたいと考えております。 (宮枝 清美)
板金加工技術で勝負? 新規事業の知財経営支援(159.2 KB)
掲載年月日:2020年3月26日