当社は1962年建設工事請負業で創業しました。2007年に現在の事業の柱になっている地盤改良工法である「エコジオ工法」の開発を決意し、三重大学との共同研究により約5年間を費やして事業化させることができました。「エコジオ工法」を全国に普及させるため施工代理店方式を採用し、令和4年7月現在、施工代理店は、青森から宮崎まで60ケ所となりました。その事業規模は約30億円を超えております。
また、施工代理店などで組織する「エコジオ工法協会」は、毎年1回、通常総会を松阪市で開催し、全国の会員が集まり情報交換等が活発に行われています。この総会は毎回、地元新聞などマスコミにも取り上げられて報道されています。
現状、三重大学と継続的な研究体制を維持していて、「エコジオ工法」は三重大学の産学連携認定商品にも認定されています。知財面では、16件の特許(9件は三重大学等との共同出願)と、7件の登録商標があります。また、地盤改良装置の開発、改良に当たっては、大手装置メーカとの共同開発の実績があります。
一方、会員である施工代理店に対しては、開業時点での手厚い技術指導、営業活動を支援するための超実践的な営業研修など手厚いプログラムを用意しており、入会後安心して代理店経営ができる体制作りに努めています。
また、地盤工学会、建築学会での研究成果発表、東京ビックサイトでの展示やセミナー開催など、全国に向けても積極的な情報発信を行っています。
「エコジオ工法」は、中空円筒形状のケーシングを地中に挿入し、ケーシングを引き抜きながら砕石を締固め、地中に砕石杭を形成させる工法です。この工法は、セメントを一切使用せず、自然石のみ使用するので、地中に人工物を残さない環境にやさしい工法です。また、砕石杭は、地盤耐力の強化に加えて、公共工事では、地震発生時の液状化防止対策としても用いられ、高速道路などの法面に適用すれば、豪雨時に道路法面が崩壊するのを防止することもできます。更に、エコジオ工法の地盤改良装置は、コンパクトで、狭い場所でも施工できるなどの特徴もあります。
同社は、従来三重大学との共同研究を中心に技術開発を推進した経緯から、主要な特許出願は殆ど三重大学等との共同出願になっていました。しかし、5年程前から、自社が独自に行う技術開発に関する発明は、同社が単独で特許出願をするべきとの方針変更を行いました。これを機に自社で単独出願する特許発明について、当窓口に支援を求めるようになりました。
約6年前より同社は、NEXCO、三重大学と連携し、3者で盛り土の排水工法の研究を開始しました。この共同研究の成果として3者による共同特許出願2件と、土木学会での共同研究発表が2回行われました。約4年前この新市場案件に関し、知財強化のため更なる特許出願を検討したいと言うことで、同社が当窓口に相談に来られました。この出願の際、同社から、3者の共同出願にする発明と、同社の単独とする発明についてどう切り分けるか、ビジネス上の活用を想定した特許の技術範囲をどう定めるか、などについて助言を求められたのが最初になります。
現在、エコジオ装置本体であるケーシング装置の改良発明の検証を行っています。この改良発明について、どこを特許発明にすべきか、配置専門家相談を受けながら特許出願準備を行っています。
また、競合他社が特許査定を受けた発明を自社が侵害するのではないかと、㈱尾鍋組内部で問題になることがありました。この時、配置専門家相談を複数回受け、配置専門家より抵触の恐れのないこと、回避の方法などについての具体的アドバイスを受けました。
これら支援開始後約1年の間に、地盤改良施工件数を6%増加させ、新たに2社の新規会員の入会が決まりました。また、令和2年度に三重県初となる百五SDGs・EGS評価1号の認定を受け、令和3年度に知財功労賞 特許庁長官表彰を受け、更に令和4年度には環境賞 優秀賞等の賞を受賞することができました。
エコジオ工法は、三重大学との共同研究により開発した国内初めての地盤改良技術ですが、技術開発資金の確保や特許の取得、及びビジネスモデルの構築にあたっては、知財総合支援窓口の支援、アドバイスが非常に参考になりました。現在の事業対象は、宅地や商業施設の地盤改良にしておりますが、今後更に研究開発を進め、土木分野での市場展開も視野に入れ、更に広い分野で活用できる技術として発展させるために知財総合支援窓口を活用して行きたいと思います。
同社は三重大学との共同研究以外に、「住宅・建築関連先導技術開発事業」など過去に14件の公的補助金等を受けており、エコジオ工法事業は産学官連携支援事業の成功例と言えます。今後も、同社の知財戦略に一層磨きが掛り、全国規模の企業に躍進できるよう継続して支援していきたいと考えます。 (杉山 早実)
エコジオ工法事業の知財側面を支援(835.4 KB)
掲載年月日:2020年3月25日
更新年月日:2022年8月22日