当社は「裂き織で障がい者の雇用の場をつくり、地域の伝統技術を未来に繋ぎたい」と今までにない「裂き織×ビジネス」に挑戦しています。
裂き織は古くなった布を細かく裂いて横糸をつくり、経糸を通した織り機で一段一段織りこんでいきます。そのほとんどが手作業です。
木綿が貴重だった時代に生まれた地域に伝わる「裂き織」の技術が現代の使われなくなった布に、「裂き織」の技術を習得しても生かす場のなかった障がい者たちによって、新しい息吹を吹き込まれ、独特の風合いを持つ商品として創り上げられています。
当社は「さんさ裂き織り工房」( 商標登録第5505995 号) と「Panoreche」(商標登録第5820190 号)の2 つの裂き織ブランドを展開しています。「さんさ裂き織工房」は岩手を代表する夏祭り「盛岡さんさ踊り」で着用した浴衣を使用した小物雑貨のブランドです。
また、「Panoreche」はアパレルメーカーで余った残反に、古くから伝わる「裂き織」の技術を使い、新しい価値をもたせた生地へと生まれ変わらせ、生活の一部に溶け込みファッション感覚で楽しめるエコライフをコンセプトとしてテーブルウェアやクッションカバー等のファブリック&ライフスタイルブランドです。
伝統的技術である「裂き織」は単なるリサイクル技術ではなく、布への愛着、大切に思う気持ちも織り込まれていると考えます。
当社で取り組む「さっこらproject」(ロゴマークは商標登録第6095870 号)は、アパレルメーカーなどで眠っているあまり布を障がい者を含む織り子たちの技術によって裂き織にし、新たな魅力を持った生地として納品するプロジェクトです。
新しい命が吹き込まれたその生地は今までになかった価値と大きな可能性を持った生地(素材)に生まれ変わることができます。
平成23年、会社を設立した同社社長は、自社ブランドの商標登録出願の相談に窓口に来所されました。社長には以前の勤務先で商標に関するトラブルの経験があり、特に自社ブランドの保護について高い意識を持たれていました。
窓口では、事業内容や事業計画をお伺いしながら指定商品・役務の助言を行うとともに、先願調査の方法や商標登録出願の出願書類作成の支援等を行いました。その出願の際には、当時始まって間もなかった東日本大震災復興支援のための早期審査制度の活用や、電子化手数料を節減しようと窓口に設置されている共同利用端末からの電子出願を行いました。
その後は、拒絶理由通知への対応をはじめ、新たなブランドやプロジェクトに関する知的財産の保護や活用、他者との連携事業の際の契約内容に関する相談など、時には専門家(弁護士)の相談会も活用しながら窓口でできる支援を継続させていただいています。
最近では地域連携プログラムとして、ワークショップ参加者の声から生まれた家庭用の手織りキット「DANBOLOOM」(意匠登録第1618198 号、商標登録第6095871 号)を商品化するとともに、製造ノウハウなど知的財産の保護の支援をしました。
積極的に知財の活用をされています。自社の2大ブランドを作り上げ、さらに「さっこらproject」ではアパレルブランドのANREALAGE、株式会社中川政七商店、株式会社アシックスの「オニツカタイガー」ブランド等の大手企業とのコラボレーションをしてきました。また、「さっこらproject」は「仕組みが価値を生み出す」ことが評価され、グッドデザイン賞(GOOD DESIGN AWARD 2018)を受賞しました。また。手織りキット「DANBOLOOM」についても製造が追いつかないほどの人気商品となっています。
知的財産の保護に関しては全くの素人で、商標権を取得しようにも自分ではどうしてよいものやら分からない状況でしたが、知財総合支援窓口にご相談したところ親身になって対応してくださり、現在まで7 つの商標登録と、1 つの意匠登録、2 つの海外商標登録を支援していただきました。弁理士さんに頼むと莫大な費用がかかりますが、自社で出願・登録をすれば実費のみですのでそれもとても助かりました。
東日本大震災の影響で事業継続に赤信号が点灯したときのスタッフを全力で守ってきた情熱、事業マネジメント能力の高さ、デザイン力の高さ、どれをとっても尊敬に値する社長さんです。社長さんだからこそできた事業だと思います。今後も更なる活躍を期待しています。 (佐藤 清子)
伝統技術「裂き織」に光をあてる知財の活用(812.3 KB)
掲載年月日:2019年6月 6日
更新年月日:2022年1月 6日